会員向ソートリーダシップ報告書:”CCS POLICY LEGAL AND REGULATORY REVIEW 2025”

本投稿は、インスティテュート会員向けに本年5月11日に公開されたソートリーダシップ報告書:「CCS POLICY LEGAL AND REGULATORY REVIEW 2025」の第2章「KEY TAKEAWAYS AND OBSERVATIONS」の日本語訳となります。より詳細の内容については、インスティテュート会員限定ポータルサイトにて公開している本報告書(下記リンクよりダウンロードが可能)をご参照ください。

 

 

ダウンロードリンク:”CCS POLICY LEGAL AND REGULATORY REVIEW 2025”

 

 

世界及び地域におけるCCSの動向を把握する上で、政策的、法的及び規制的枠組みは、引き続き中心的な役割を果たしています。

本書では、CCSのガバナンス体制の変更、大規模展開を支援する政府のイニシアティブ、市場及び規制に関するより広範な動向等、2025年の1年間におけるCCS部門全体の主要な動向を検証し、アメリカ、欧州、アジア太平洋(APAC)、中東・アフリカ(MEA)におけるCCSの政策、法制度および規制の動向を取り上げています。さらに、政策・法制度・規制の観点より、CCS技術の大規模導入に向けた現在の課題についても整理しています。

 

 

CCS政策・法規制の概要:第二章 動向と考察より

(”CCS POLICY LEGAL AND REGULATORY REVIEW 2025” 2.0 KEY TAKEAWAYS AND OBSERVATIONS  )

米州

2025年、米国、カナダ及びメキシコにおけるCCS政策に関する進展は、地域によって異なりました。米国では、連邦政府の優先事項が低炭素分野から他へ移行するにつれ、様々な州がより主導的な役割を担うようになりました。連邦政府による資金提供の一時停止やプロジェクトの中止により、いくらかの不確実性が生じたものの、米国議会は45Q税控除を維持し、強化しました。カナダでは、CCS投資税控除(CCS Investment Tax Credit:ITC)が再確認されました。具体的には、ITCの適用期間が2035年まで延長され、CCSプロジェクトに対して50%のITCを申請できる制度が維持されました。加えて、カナダの州では新たな貯留法及びオフセット・プロトコルが整備された一方、メキシコでは、州レベルでのカーボン・オフセット規則が、同国の強化された国家気候コミットメントを補完しました。

州は、新たな法整備、許可手続きの改革、規制の改良を通じて、CCS政策の推進力をますます強めていきました。米国では13州が20以上のCCS関連法を可決しました。さらに、3州がクラスVIプライマシーを新たに取得したことで、貯留許可手続きが加速される見込みです。カナダでは、カナダ・アルバータ州間の覚書(MoU)等、連邦と州の連携が強化された一方、メキシコ・コリマ(Colima)州では、炭素税及びオフセット・メカニズムが実施されました。

全体として、2025年は、CCSが依然として幅広い政策的関心を集めていること、また、CCS及びCCUSの展開を支える市場枠組みが維持されているか、場合によっては強化されたことを示しました。米国は、45Q税控除の下でCO2の有効利用と地中貯留の等価を実現し、排出削減が困難な部門に向けて実行可能なビジネスモデルを拡大しました。ブラジルは、ブラジル温室効果ガス排出量取引制度(SBCE)の枠組みを定めた法律の可決、CCS/CCSを伴うバイオエネルギー(BECCS)の規制に関する協議の開始等、国家炭素市場の立ち上げに向けて大きく前進し、SBCEへのCCS統合に向けた基盤を築きました。CCS展開の拡大は、今後もこの地域の手厚い財政的インセンティブ、市場設計及び明確な規制の道筋によって恩恵を受けるでしょう。

 

アジア太平洋・インド(APAC)

APAC地域は、国際気候コミットメントの強化や国のネットゼロ公約が主な原動力となり、CCS関連政策や規制枠組みの整備を着実に、しかしばらつきを見せながら進めています。豪州や日本等の先行国が先進的な枠組みを継続的に改良していく一方、マレーシア、インドネシア、韓国、インド、タイ等、ますます多くの国がCCSに特化した法律、規制、戦略及びロードマップの策定ないし強化に取り組んでいます。こうした勢いにもかかわらず、ブルネイ、カンボジア、東ティモール等、排出量の多いいくつかの国では、依然として実質的な政策措置が講じられていません。

同地域は、CCSの展開を加速する上で、引き続き国際協力、二国間協定及び地域調整メカニズムに依存しています。現在では、いくつかの国がNDCにCCSを盛り込み、その国の進捗状況を、気候ファイナンス、技術移転及び能力構築の形での国際支援と明確に結び付けています。これが、国境を越えたCCSバリューチェーン構築に重点を置いた一連の政府間覚書(MoU)の締結を促進しました。同時に、APACのいくつかの国は、炭素市場の規則の調和と、複数の排出量取引制度(ETS)間の相互運用性に向けて取り組んでいます。

東南アジアでは、国有企業(SoE)が引き続きCCS開発を牽引しています。その事例としては、マレーシアCCUS規制が10月に施行された後、初の沖合CO2貯留評価許可を取得したPetronas社や、Arthitガス田におけるCCS事業の実施について最終投資決定(Final Investment Decision:FID)を行い、タイ初の商業CCSプロジェクトを実現させた同国のPTTEP社が挙げられます。

去年1年間で、いくつかの国がETS制度を導入ないし拡張し、また他の国々はCCSを支援するための財政的インセンティブを強化しました。ニュージーランド、インドネシア、韓国がCCSを炭素クレジット・メカニズムに組み込み始めている一方、インドは、優先部門におけるCCS展開を加速するため、大型資金提供を発表しています。しかし、炭素市場が成長し、CCSに向けた資金提供が増加しているにもかかわらず、課題は依然として残っています。これらには、市場参加規則の相違、CCSに特化した方法論の不足、CCS費用に比べて低い炭素価格、市場の調和の欠如等が含まれます。

 

欧州

欧州全体では2025年、産業脱炭素化の加速を目的とした包括的な政策体制がEUレベルで確立され、その中でCCSが中心的役割を果たしました。EUは、クリーン産業ディール(Clean Industrial Deal)、ネットゼロ産業法(Net Zero Industry Act:NZIA)、EU ETS及び炭素国境調整メカニズム(Carbon Border Adjustment Mechanism:CBAM)の更新の下で主要な法的パッケージを推進し、EUの産業競争力及び気候戦略を強化しました。これらのイニシアティブは、とりわけホライズン・ヨーロッパ(Horizon Europe)及びEUイノベーション基金(EU Innovation Fund)を通じた多額の研究・イノベーション資金によって支えられました。全体として、これらのイニシアティブは、CO2貯留能力を拡大し、欧州産業を低炭素技術の世界的リーダーに位置付けようとするEUの意向を浮き彫りにしています。

商業規模プロジェクトへの資金提供も、EU及び加盟国レベルで継続されています。NZIAに基づいた戦略的プロジェクト・ステータス(Strategic Project Status)メカニズムや、強化されたCBAM規則等、新規ないし更新された規制ツールに補完され、EU及び欧州国家は、CCSの展開を促進するため、規制面における確実性とより明確な投資シグナルを提供することを目指しています。

ここ1年間で、EUはCCSバリューチェーンの統合が進んでいることを改めて強調しました。EUは、共通利益プロジェクト及び相互利益プロジェクト(Projects of Common and Mutual Interest)のポートフォリオを拡大し、更なるCO2輸送ネットワークや隣接地域との相互接続を加えた一方、カーボンプライシング及びCO2輸送に関するより広範な国際協力も推進しました。英国は2025年、許可・ライセンス付与ラウンド、投資決定及び産業クラスター全体での商業プロジェクト活動において重要な節目を刻みました。全体として、これらの動向は成熟しつつある地域エコシステムを反映しており、そのシステムの中で、欧州のネットゼロへの道の一環として大規模CCSを実現するために、政策、資金調達、インフラ及び商業展開がますます連携を深めています。

 

中東・アフリカ地域

MEA地域全体において、CCS政策は漠然とした野心から実践的な実施へと移行しつつあり、各国はNDCを更新し、国家CCS枠組みを発表し、カーボンマネジメントを気候及びエネルギー規制に組み込み始めています。しかし、大半の国ではCCSに特化した法律がまだ整備されておらず、許可手続きは石油ないし一般的な気候法に紐づけられたままであるため、大規模展開が限られています。

炭素市場の整備は加速しており、南アフリカ、ケニア及びナイジェリアでは、義務的ないし自主的メカニズムが推進されている一方、新たな覚書や第6条パートナーシップを通じた地域協力が拡大しています。これらの国際合意には、資金援助の要素が含まれていることが多く、同地域がCCS及びより広範な脱炭素化イニシアティブを進める上で外部資金や協力に依存している実情を反映しています。

特に中東では、国有エネルギー企業が、引き続きCCS展開を推進しています。同地域ではここ1年間で主要なプロジェクトの発表や早期DACイニシアティブが見られました。規制的枠組みは依然として不完全であるものの、政府と国営石油会社間の連携の強化は、資金調達や規制面でのギャップが同地域の主な障壁となっている中でも、CCSガバナンスがより制度化される方向へと徐々に移行していることを示しています。

 

著者:Bernardene Smith、Principal PLRC、Global Research and Analysis

以上

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